6/21/2011

課題

小児脳腫瘍の抱える問題点

・ 小児の固形がんの中では最も発生頻度が高く、かつ死亡率の高い疾患である
・ 小児悪性腫瘍による死亡の最大の原因は脳腫瘍である
・ 治療法の選択が極めて難しい
・ 日本においては,少ない症例が多くの施設に分散することで、治療水準の向上を妨げている
・ 高度な治療のできる施設が限られており、それらの施設でも十分な治癒実績が得られていない
・ 施設によって受けられる治療に大きな格差が生じている
・ 高度な機能を持つ脳に対する治療の結果、救命できても重い障害が残ることが多い
・ 成人後も継続する治療の経済的負担が大きい
・ 障害により、成人後の自立が難しい
・ 乳幼児・学童・生徒に長期の治療を行うため、保育や教育の現場での配慮が必要になる
・ 入学・復学がうまく行かない
・ 知能低下、機能低下、体調不良などにより学校生活にうまく適応できない
・ 発達期の子どもに対する心理的な影響が大きい

上に挙げたように、小児悪性腫瘍、特に脳腫瘍が抱える課題は 枚挙にいとまがない。医学的な課題、社会的な課題、行政的な課題など、現在それぞれの専門家が地道に解決策を模索している。そのなかでも、拠点となる病院、センターとしての病院への集約化は、知識、技術、know-howの蓄積という意味では課題解決のための最大の試金石になる可能性がある。

6/10/2011

種類と発生部位

小児脳腫瘍の中には多くの種類の腫瘍が含まれますが、発生頻度の高いものとして星細胞腫、胚細胞腫瘍、髄芽腫、上衣腫、頭蓋咽頭腫が挙げられます。これらの腫瘍で小児脳腫瘍全体の約65%を占めると報告されています。2009年版全国脳腫瘍集計調査報告によると、発生頻度は星細胞腫 18.6%、髄芽腫 12.0%、胚種 9.4%となっています。
発生部位の特徴として、天幕下や正中線上に発生することが多いことが知られています。つまり生命中枢や神経内分泌中枢の近くに発生します。後頭蓋窩に発生する脳幹神経膠腫、髄芽腫、上衣腫などは前者の代表例ですし、神経下垂体部胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、視神経神経膠腫などは後者の代表です。このため、手術による腫瘍摘出が制限されたり、放射線治療の範囲や照射量などにも制限が出てきます。
また、もう一つの特徴として、脳脊髄液の流路に接して発生するという特徴を有しています。これは、腫瘍が大きくなるにつれて脳脊髄液が流れにくくなったり、完全に流れなくなったりすることがあり、水頭症の原因となります。

6/03/2011

発生頻度 ー 小児脳腫瘍をもっと詳しく知りたいあなたのために

脳腫瘍を俯瞰すると全年齢にわたり発生しているが、その本質は成人の腫瘍であり、小児発生例は全脳腫瘍の8%に過ぎない。しかし、視点を変えて小児がんの側から脳腫瘍を眺めてみると、小児脳腫瘍は白血病に次いで発生頻度が高く、小児期に発生する固形腫瘍の中では最も頻度が高い重要 な疾患といえる。日本脳腫瘍全国集計によれば成人を含めた脳腫瘍の発生頻度は、人口10万人に対して12.8人、小児に発生する頻度は7.8%と報告されている。全原発性脳腫瘍の11.1%を占める 。