胎生4週頃は、形態形成、組織形成に関連する多くの遺伝子が連鎖的に発現する時期とされ、体を形成するといった観点から極めて重要な時期といえる。
胎児期の原始胚細胞が段階的に分化して精子,卵子になる。また原始胚細胞は原始生殖腺を発達させて精巣、卵巣を形成させる。
原始胚細胞は胎生3週の頃、尿膜に近い卵黄嚢壁の内胚葉細胞間に出現し、胎生5週(生殖腺原基が形成されるステージ)までに後腸の背側腸間膜に沿いアメーバ運動で移動し、将来生殖腺原基となる生殖隆起に到達する。原始胚細胞は、移動に失敗し、目的地である生殖隆起に到達せずに他の部位に紛れ込み腫瘍化することもある。
第6週に原始胚細胞が原始生殖腺の生殖堤に到達すると生殖腺が発達し卵巣,精巣が形成される。原始胚細胞がないと生殖腺の発達が開始しない。
中胚葉由来の生殖隆起は、移動して来た原始生殖細胞と共に、生殖腺原基(後の精巣、卵巣)を形成する。
のちの成熟した生殖腺(精巣、卵巣)に含まれる細胞のうち、生殖細胞(卵子、精子のもと)となるのは、移動して来た原始胚細胞由来の細胞のみであり、生殖隆起を形成する細胞群は、その「いれもの」としての役割に終始する。
ヒトでは生殖細胞(原始胚細胞)が、生殖腺原基の器の部分(生殖隆起)を構成する細胞から分化してくるのでなく、別の場所で分化してから「移動」してくる、しかも生殖隆起は中胚葉性の中腎表面の肥厚、原始胚細胞は内胚葉性の卵黄嚢と、その由来までもが異なる。
これは、生殖細胞が他の細胞とは違う「特別な細胞」であること、将来生殖細胞の「いれもの」となる生殖隆起を構成する細胞群と、生殖細胞となる原始胚細胞とでは明確な役割分担があり、それぞれのアイデンティティーが確立されていること、生殖細胞の分化が胚発生のごく早い段階(遅くとも胎生3週の頃)で既に行われていて、別の細胞は、その肩代わりができないことを示唆している。